不動産特定共同事業法
不動産特定共同事業法とは
不動産特定共同事業法(以下は総称して「不特法」といいます)は、不動産特定共同事業の健全な発展と投資家の利益保護を目的とした法律で、平成7年4月に施行されました。不特法は、事業を行う不動産会社(不動産特定共同事業者)に対して経営内容等に厳しい条件を課しており、「不動産特定共同事業の許可要件」をクリアした事業者だけが小口化商品の販売を許可されています。事業者は、年に1回事業報告書を作成し、許可を受けている国土交通大臣または都道府県知事に提出し、チェックを受けています。
不動産特定共同業の許可要件
- 法人であること
- 宅地建物取引業者であること
- 最低資本金を1億円とすること(契約締結の代理媒介のみでは2,000万円)
- 純資産額が資本または出資額の90%以上であること
- 事務所ごとに「業務管理者」が置かれていること
- 契約約款の内容が政令で定める基準に適合していること
- 事業を適格に遂行するに足りる財産的基礎及び人的構成を有すること
不動産特定共同事業法の概要
不特法は投資家が出資等を行い、不動産会社等の専門家が不動産取引により運用し、収益の分配を行う契約を対象とし、そのような事業を規制することで投資家保護を図る構造となっています。
不特法の構成は、1.定義、2.許可制、3.業務規定、4.監督規定、5.罰則規定から成り立っています。
1.定義
不特法は、事業者の責任を明確にし、投資家を保護するため事業者を許可制として、一定の欠格事由・許可基準を満たすことが必要とされています(下図参照)。主な許可要件としては、資本金・宅地建物取引業者の免許・法令違反者の排除・業務管理者の設置・約款の制定・事業遂行に的確な財産的基礎と人的構成等の基準が設けられています。
信託会社については、宅地建物取引業法第77条第3項の届出をしていれば、不特法の特例によって不動産特定共同事業者とみなされることになっています。
2.許可制
不特法の対象となる不動産特定共同事業として、「不動産特定共同事業契約に基づき営まれる不動産取引から生ずる収益等の分配を行う行為」と、「不動産特定共同事業契約の締結の代理・媒介をする行為」の2つが定義されています。上記の定義に関連して、「不動産特定共同事業契約」、「不動産」及び「不動産取引」が定義されています。
- 注1法は不動産特定共同事業法、令は司法施行令、則は同法施行規則
- 注2内閣総理大臣から金融庁長官へ権限を委任していることによる(法第49条第3項)
3.業務規定
不特法では、情報開示と行為に関する規制を定め、投資家(事業参加者)保護を図っています。主な規制内容は次の通りです。
情報開示としては、契約前書面の交付(不特法第24条)・契約成立時書面の交付(不特法第25条)・約款による契約・財産の管理報告書の交付(不特法第28条第2項、第3項)・業務および財産の状況を記載した書類の設置・事業参加者名簿の作成(不特法第30条)等。
行為規制としては、名義貸しの禁止(不特法第15条)・広告の規制(不特法第18条)・事業開始時期の制限(不特法第19条)・不当な勧誘の禁止(不特法第20条)・再勧誘の禁止(不特法第21条)・損失補填等の禁止(不特法第21条の2)・適合性の原則等(不特法第21条の2)・金銭等の貸付や媒介の禁止(不特法第22条)・書面による契約解除(不特法第26条)・財産の分別管理(不特法第27条)・守秘義務(不特法第31条)等。
※不動産に対する投資に係る専門的知識及び経験を有する者として、銀行、信託会社、保険会社、不動産特定共同事業者、許可宅地建物取引業者、登録等私法人、特定目的会社および資本金5億円以上の株式会社等(以下、特定投資家)を相手方又は事業参加者として不動産特定共同事業を行う場合、上記の条文を付した規制は適用除外となっています(不特法第46条の2、同法施行規則第31条第1項)。さらに、約款の内容基準の中にも、規制内容が定められています(特定投資家の場合には、一部の基準が適用されないことになっています(不特法施行規則第8条))。
4.監督規定
不特法については、事務所の設置状況や約款の内容によって、内閣総理大臣(金融庁長官に委託)・国土交通省大臣(主管)・各都道府県知事がそれぞれ監督を行うことになっています。
監督に係る主な規制には、事業年度ごとに事業報告書を主務大臣等に提出する他、必要に応じて主務大臣等から指示・業務停止命令・業務管理者の解任命令・許可の取消し・指導・立入検査などの監督処分等の規則があります。
5.罰則規定
例えば、無許可での不動産特定共同事業の実施には、3年以下の懲役もしくは、300万円以下の罰金、またはこれらの併科など、違反者に対する厳しい罰則規定が定められています。
以上のような規制によって、投資家を保護し、健全な市場育成を維持しています。